英検1級は英語学習者にとっての一つの大きな目標です。英検1級のレベルは「大学上級程度」で、ライティング・リーディング・スピーキング・リスニングの4技能の総合力が試されます。本記事では英検1級合格者である筆者が、実際の経験をもとに、合格に欠かせないおすすめの参考書や、勉強のポイントについてご紹介します。
英検1級とは?
まずは英検1級について、どのような試験なのか確認しておきましょう。
英検1級基本情報
日本英語検定協会は、英検1級の目安を、「大学上級程度」としています。英検の最上位の級である英検1級の習得目標を、「リーダー(品格)の英語」「ライティング、スピーキングを含む4技能の総合力」としています。
英検1級となるためには、一次試験と二次試験の両方に合格する必要があります。一次試験は、筆記100分、リスニング約35分です。二次試験は、面接委員(日本人とネイティブ各一人)とのマンツーマン面接で約10分です。
2016年度より、英検CSEスコアによる判定に変更になり、リーディング、リスニング、ライティングの3技能の各技能の合計で合否が判定されます。
合格スコアは、一次試験2028(満点850×3技能=2550)、二次試験は(スピーキングのスコアのみで判定され)602(満点850)です。
合格率は、英検として発表されていませんが、一次二次合わせて、10%前後で推移しています。
英検1級の参考書・問題集選びのポイント4つ
分野別の参考書・問題集を次章で詳しくご紹介しますが、その前に、どのように問題集を選べばいいかのヒントをご説明します。
英検1級の参考書・問題集選び|自分のレベルに合っているか
英検1級を受験しようと考えられる方は、一定以上の英語力をお持ちだと思います。
とはいえ、学生(高校生or大学生)か社会人か、留学や駐在経験の有無などいろいろな条件の違いがありますので、あなたのレベルにあった問題集・参考書を選ぶことが大切です。
英検1級の参考書・問題集選び|最新版か
英検では、2016年の第1回より、3級以外のすべての級で問題形式や試験時間などの変更を行いました。また、ライティングテストに関して、観点別採点を導入しました。さらにCSEスコアによる合否判定に変わりました。
旧バージョンの問題集・参考書で勉強すると、いろいろな不具合があります。フリマ・オークションサイトなどで購入される場合は、最新版かどうかを必ずチェックしましょう。
英検1級の参考書・問題集選び|準備にかけられる時間はどれぐらいか
「最短2週間で合格!」などと銘打った問題集・参考書等もありますが、英検1級の場合、余程の実力者でない限り、合格のための勉強時間は、ある程度以上必要だということを肝に銘じておきましょう。
試験直前の見直しなどにそのような問題集・参考書を利用することはおすすめしますが、それ以外の場合は、英検1級合格のための勉強は、ロングタームで考えておくといいでしょう。
英検1級の参考書・問題集選び|英語力全体の底上げを狙えるものか
英検の勉強をする場合、1級までの級なら、「英検〇級用」の問題集・参考書だけでもきちんとやり切れば、問題ありません。
ただ、英検1級ともなると、「英検1級用」の問題集・参考書をしているだけでは、心もとない気がします。「急がば回れ」という言葉があるように、一度、基本的なことを整理・確認することも、かえって効果的だといえます。
また、多ジャンルの事柄にもアンテナを張っておくこともおすすめします。
英検1級の参考書・問題集おすすめ17選【分野別】
英検1級合格のために役に立つ、英検1級ホルダーがおすすめする問題集・参考書をご紹介します。実際に、筆者が使って役立ったものばかりです。
英検1級の参考書・問題集|ボキャブラリー(語彙)対策4選
英検1級合格のためには、ボキャブラリーは優先課題です。単語本はどちらか1冊は必携です。
でる順パス単英検1級
英検受験生なら、1冊は必ず必要な単語本です。
英検データ分析に基づく『でる順』(頻度順)掲載なので、効率的に学習を進めることができます。
単語本は1冊に絞って、何周も擦り切れるまですれば、合格の灯が見えてきます。どこに行くにも、単語本と一緒に出掛け、すき間時間にはいつも見ているようにしましょう。
これは、筆者が愛用した「パス単」です。この書き込みを見てください。ページのよれを見てください。ぜひ、ここまで使い込んでください。
キクタン英検1級
キクタン英検1級は、「音声を聞くだけで単熟語&例文が覚えられる!」です。こちらは、アルクの本ですが、英検受験者は、パス単かキクタンのいずれかは必ず持っています。
両方は必要ありませんので、どちらかをあなたの好みで選びましょう。あなたが使いやすい方を選び、とことんやりこんでください。
キクタンには、「書いて覚える!キクタン英検1級ワークブック」というものも出ています。
英検1級語彙・イディオム問題500
旺文社の英検参考書の人気シリーズ「分野別ターゲット」の語彙・イディオムの問題集です。単語本で覚えた単語・イディオムも、問題の文脈の中で解答できてこそ、英検の試験で力を発揮します。
単語本で覚えるだけでなく、短文空所補充問題で実戦力を養いましょう。ただ、いきなり、こちらをし始めるのではなく、最低限、単語本を一巡以上した後で、こちらを解く方が効果的でしょう。
出る順で最短合格!英検1級語彙問題完全制覇
ジャパンタイムズ社刊の「完全制覇」シリーズの中の語彙問題集です。収録語数が大幅に増えました。解説には、類義語、反義語、派生語、関連語が掲載されているので、効率的に単語を覚えることができます。
英検1級の参考書・問題集|リーディング(長文読解)対策3選
英検1級のリーディングは、長文の語句空所補充 6問、長文の内容一致選択 10問です。意外に、テストでは時間が取られて、最後の英作文で時間が足らなかったということもよく聞きます。
リーディングの問題をするときは、時間も意識して解くようにしましょう。
英検1級長文読解問題120
旺文社の「分野別ターゲット」シリーズの長文読解問題集です。これを何回も解くことによって、英検1級の長文問題のスタイルに慣れることができます。
また、間違ったところをそのままにせず、解説をしっかり確認すると、間違いが力になります。何度も言いますが、時間をはかってしましょう。
テーマ別英単語ACADEMIC 【上級】01(人文・社会科学編)
こちらは、Z会の参考書です。興味深い話題を古典から現代まで網羅しています。背景知識や汎用性の高い関連知識の解説もあり、英作文や二次試験対策にもなります。専門用語も実際に使われているのを読むことで定着します。
格調高い文章が読めますので、興味を持たれたら、ペーパーバックなで関連書籍を探されてもいいでしょう。
テーマ別英単語ACADEMIC 02【上級】02(自然科学編)
前項の兄弟シリーズ「自然科学編」です。ダーウィンやレイチェル・カーソンなど理系必出の話題、iPS細胞や科学的根拠に基づく医療などホットなトピック満載なので、ライティングや二次試験対策に必ず役立ちます。
この本は、多様な文体、高級な英文で、試験が終わった後も手元に残しておきたくなります。
英検1級の参考書・問題集|ライティング(英作文)対策2選
ライティングに苦手意識を持つ受験生も多いですが、コツをつかめば、意外に点が取れるのが英作文です。問題集でコツをしっかり、自分のものにしてください。
英検1級ライティング大特訓
英検1級指導では定評のある植田一三先生の人気の「大特訓」シリーズです。宇宙開発や人工知能など頻出トピック37問が載っています。頻出トピックを徹底演習することによって、他のトピックにも対応する力が付きます。
二次試験にも応用できるので、英作文対策参考書は、1冊は用意しましょう。
英検1級最短合格!英作文問題完全制覇
環境保護、テクノロジーなど過去問から導き出した12の分野から答案作成に使えるパラグラフ単位の英文212が収録されています。それらを覚えることによって、どんなトピックにも対応できる表現力を身につけることができます。
知識の引き出しを増やすことによって、英作文にも、二次試験にも効果を発揮します。
英検1級の参考書・問題集|リスニング対策2選
英検1級のリスニングは、ほぼナチュラルスピードなうえ、使用語彙も難易度がアップします。試験内容は、会話の内容一致選択 10問、文の内容一致選択 10問、Real-life形式の内容一致 5問、インタビューの内容一致 2問です。
まず、過去問や問題集で、英検スタイルの問題に慣れましょう。そのうえで、いろいろな英語コンテンツを聞いて英語耳を養いましょう。
英検1級リスニング問題150
過去問96問、オリジナル問題54問の計150問が収録されています。答えを覚えてしまってもいいですから、何度も聞いて、英語耳を養いましょう。英検のリスニング問題に慣れることがスコアアップの秘訣です。
まずは、英検1級に合格するためには、英検1級のリスニング問題に慣れましょう。
ENGLISH JOURNAL
英語学習、英語リスニングのための月刊学習誌です。音声は、DLできますので、音源をどこにでも持って行って、すき間時間に聞くことができます。生英語中心の多彩なニュースや映画などのコンテンツで飽きません。
今回、ご紹介のENGLISH JOURNALとCNN English Expressが、英語学習者の人気を二分しています。どちらを選ばれてもいいと思いますが、要は、「継続は力なり」です。毎月新しい1冊が来るのは、英語学習のペースメーカーになります。
英検1級の参考書・問題集|二次試験(面接)対策2選
一次試験の合格がわかってから、二次試験までは2~3週間しかありませんが、英作文とかぶる部分も多いので、焦る必要はありません。
一次試験の英作文の対策を十分して、一次試験終了後、結果がわかる前から二次試験の準備を始めるといいでしょう。
英検1級面接大特訓
植田一三先生の「大特訓」シリーズの面接版です。英検1級面接に的を絞った内容なので、特に、英検1級の面接を初めて受ける人には最適です。
トピックの例だけでなく、面接のための勉強法、頻出トピック、面接で使える短文フレーズなど大いに活用できます。
英語で経済・政治・社会を討論する技術と表現
英語で、経済・科学技術・政治・国際・環境・医療・教育などさまざまなジャンルについて、英語で意見を述べるときに必要な語彙や表現が、コンパクトにまとめられています。
英検1級の面接だけでなく、TOEICや国連英検、通訳案内士(英語)等の受験にも役立ちます。
英検1級の参考書・問題集|過去問2選
英検1級合格のために、過去問をやり込んで、出題傾向をつかみ、自分の弱点を知り、その部分を強化することが、合格に一歩近づくための秘訣です。分野別の問題とともに、過去問もやる必要があります。
英検1級過去6回全問題集
過去6回分(=2年分)の過去問集です。使い方としては、「とにかくやってみて、自分の実力や弱点を知る」、「途中で、どのぐらい理解が進んでいるかをチェックする」、「試験直前に総まとめとしてする」などどのタイミングでも活用することができます。
いずれの場合でも、やりっぱなしではなく、間違いの原因を解説で確認することを忘れないでください。
英検公式サイト 過去問
英検の公式サイトには、直近3回分(=1年分)の過去問が掲載されています。プリントアウトすれば、英検の本番試験と同じスタイルの問題用紙を印刷することができます。
リスニング音源もあるので、模擬テスト感覚で受けることができます。無料で利用できますので、利用しない手はありません。
英語力全体の底上げを目指す参考書2選
英検1級合格を目指す場合、「英検1級○○」という問題集だけでなく、英語の基本に立ち返る本質的な参考書を机の横において、問題を解いていてつまづいたときなどに立ち返ることは、必ず、英語力アップに貢献します。
英語の構文150 upgraded 99 lessons
筆者は、旧バージョンの「英語の構文」をやりましたが、英検1級合格後の今も、時たま取り出して眺めています。
この本には、厳選した基本構文150が99課3段階にまとめられていますので、構文理解が深まり、リーディング力アップにつながります。詳しい図解入りの「別冊 解答・解説」は、非常に役立ちます。
英語リーディングの極意
英語学習中級~上級者向けの読解参考書です。さまざまな英文読解に応用できる方法や、高いレベルの英語を使いこなすためのヒントがいっぱいです。
問題集で実戦力を養うことも大切ですが、こういう本で、自分の知識を整理することも大切です。
参考書・問題集以外で英検1級対策におすすめの方法
英検1級に合格するためには、問題集・参考書以外のいろんなツールを活用することは、効果的です。また、長い受験勉強に飽きた時の気分転換にもなります。
NHKラジオ語学講座の活用
NHKラジオ第2では、さまざまな語学番組が放送されています。今では、オンタイムにラジオを聞かなくても、スマホのアプリ「らじるらじる」でいつでも何度でも聞けます。
英検1級受験者には、「ラジオ英会話」「ラジオビジネス英会話」「ニュースで英語術」あたりがおすすめです。2021年の3月に終了した杉田敏先生の「実践ビジネス英語」の代わりに、放送はありませんが、音声DL BOOK「杉田敏の現代ビジネス英語」が季刊で出ていますので、要チェックです。
ブログやSNSで発信する
英検1級合格のための勉強は、孤独です。途中で投げ出したくなることもあります。そんな時、ブログやSNSで知り合った英検学習者とのつながりが支えになることもあります。
また、ブログやSNSで「英検1級を目指すぞ!」と公言することによって、自ら、逃げ道を断つことも、途中挫折を防ぐためには有効です。
もちろん、学校や会社の仲間もいいですが、直接利害関係のない人たちと励ましあって勉強をするというのもいいものです。日本中、世界中に仲間を見つけることができます。
アプリ・Podcastの活用
アプリやPodcastがあれば、いつでもどこでも、勉強ができます。英検公式サイトでも、おすすめのアプリやPodcastが紹介されています。
その中でもおすすめのアプリは「Cake(ケーク)英会話」です。こちらは無料です。豊富なコンテンツで、楽しみながら勉強を続けることができます。
英検1級に合格するために
英検1級ホルダーになれば、いろいろなシーンで優遇を受けられるなど、学校・社会において、英検1級の価値は認められていますが、取得するには相当な努力が必要です。
その努力は、必ず、あなたの英語力になりますから、準備をしっかりして、英検1級合格を勝ち取りましょう。
英検1級合格に必要なこと
一次試験は、筆記100分【リーディング(短文の語句空所補充 25問、長文の語句空所補充 6問、長文の内容一致選択 10問)、ライティング(英作文)】、リスニング約35分【会話の内容一致選択 10問、文の内容一致選択 10問、Real-life形式の内容一致 5問、インタビューの内容一致 2問】です。
二次試験は、面接委員2人(日本人とネイティブ各1人)との10分間のマンツーマン面接です。自由会話、与えられた5つのトピックから一つ選び、スピーチを2分間行い、スピーチの内容についてのQ&Aがあります。
英検によると、英検1級で出題されるジャンルとしては、「芸術・文化」「歴史」「教育」「科学」「自然」「環境」「医療」「テクノロジー」「ビジネス」「政治」など多岐にわたり、他の級に比べて、内容はより高度、かつアカデミックになります。
英検1級に合格するためには、すでに英検準1級を取得されていて、留学や駐在経験がないなどの場合、必要な学習時間は、だいたい500~600時間ではないかと言われています。
英検1級合格のための勉強法
各分野の勉強法をかんたんにご紹介します。
ボキャブラリー(語彙)
英検1級の必要語彙数は、10,000~15,000語と言われています。学術的な単語、抽象的、概念的な単語も多いです。「あんな単語なんて使うことなんてめったにない!」などという意見もありますが、そんなことはありません。
“TIME”や”Newsweek”等ではどんどん使われています。英検1級に合格後、どんな英語を使う人になりたいのかをイメージしましょう。
「知らない単語は読めない、書けない、聞けない、話せない」を肝に銘じて、ボキャビルに励みましょう。
リーディング(長文読解)
英検1級の長文読解を自分のものにするには、「精読」「速読」の二方向から攻めましょう。どちらも必要です。あらゆるジャンルの長文を読みましょう。また、英検の出題スタイルにも慣れることが必要です。
ライティング(英作文)
なにより、英文エッセーの論の展開方法=構成(結論→理由→理由をサポートする具体例→理由→理由をサポートする具体例→結論)をマスターしましょう。
ライティングの練習は、二次試験の面接にも必ず役立ちますから、苦手意識を持たないで頑張ってください。
リスニング
英検1級リスニングの過去問を何度も繰り返し練習するだけでなく、いろいろな英語のコンテンツを聞いて、英語耳を作りましょう。
今や、英語コンテンツを探すのは簡単です。すき間時間を利用して、日常的に英語を聞く習慣を身につけるといいでしょう。ラジオやアプリなどの利用をおすすめします。
二次試験(面接)
構成(結論→理由→理由をサポートする具体例→理由→理由をサポートする具体例→結論)に基づいて、自分の意見を表明できるようにしましょう。
時間をはかりながら、練習することも大切です。ライティングとの共通点がいっぱいなので、並行して学習すると効率的です。
参考書・問題集を使い込んで英検1級に合格しよう
英検1級合格におすすめの問題集・参考書をご紹介しました。種類も豊富なので、目移りするかもしれませんが、最初にすべてを揃えるのではなく、学習段階などをみて、必要に応じて買いそろえていくといいでしょう。
ここで紹介した問題集・参考書があなたの英検1級合格のお役に立つことを祈っています。