英語力の基盤ともいえる「英文法」。しかし単語と違って「覚え方が分からない」「どうしても覚えられない」そんな悩みを抱える方は多いです。
この記事では、そもそも英文法を学ぶ必要性、覚え方、覚える際のポイント、覚えられない人の特徴について、元塾英語講師が解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 英文法の勉強法が分からない
- 英文法の勉強が進まず困っている
- 英文法のおすすめ教材を知りたい
英文法を覚える必要はあるの?
小さいお子さんは文法を勉強しなくても、生活の中で言葉に触れているだけで言語を吸収して、身につけることができますよね。
しかし、大人はきっちりと文法を学んだ方が、効果的に言語を身につけることができます。なぜなら子どもと大人の脳は、働き方が違うからです。
小さい子は必要ないけど、大人は必要
大人が子どものように、たくさんの英語に触れているだけで英語を読んだり話せるようになるのは、とても難しいという研究結果もあります。
赤ちゃん〜子どもは、ものをどんどん覚えて吸収することが得意な脳のつくりをしています。英語の発音も、子どもたちは聞いたそのままの音を発音できてしまいますよね。
一方年を取ると、こうした能力は失われていきます。英語の発音も、子どものようには上手く真似できません。
しかし、大人になると、理論だったことを覚える能力が高くなります。
そのため、大人は子どもと違い、理論を身につけて英語を学習するのが効果的だと考えられています。
文法とは、語順の規則のこと
文法は、簡単に説明すると「語順の規則」のことです。
単語の並べ方の順番は、英語と日本語では全く違います。英語は、一般に主語の次に動詞がくる「SVO型」。一方日本語は、動詞が最後になる「SOV型」です。
そして、「言語間距離」という概念があります。これは、ある言語とある言語がどのくらい似ているか、を示したものです。
英語と日本語の距離は、もっとも遠いとされる「レベル4 難しい」に分類されています。日本人にとっては、英語学習はとても難しいということが示されています。
また英語は、日本語に比べて語順に重要な役割があります。
例えば、「ミキは、妹にプレゼントを渡した。」という日本語の文は、「ミキは、プレゼントを妹に渡した。」と語順を入れ替えても問題ないですよね?
しかし、
“Miki gave her sister a present.”という文は、
“her sister”と“a present”をただ入れ替えることはできません。
意味が通じるように入れ替える場合、
“Miki gave a present to her sister.”
と、“to”を“her sister ”の前に入れる必要があります。
give +人 +物=give +物 +to 人
という明確な語順のルールが存在するんですね。
このように英文法はルールを理解して覚える必要があるというわけです。
英文法は入試やTOEICでも必要
もちろん、英文法の勉強は、入試などにおける文法問題で正答するのに必要です。
しかしそれだけではなく、長文を読むためにも、正しい英文法の知識が必要です。
英文法を正しく理解すると、英語長文の速読能力も向上します。
長文全体を理解するためには、まずは文中の1文1文から。
英語の長文は、英文が数多く集まってできています。長くて複雑な長文であっても、それを細かく分ければ、全て短い英文です。
丁寧に英文構造を把握することは時間がかかり、本当に意味があるのか疑問に感じることもあるでしょう。
しかし、丁寧に1文1文、文法を理解して読んでいくと、英文を読むスピードもあがり、後からこの大切さに気づきます。
まずは時間がかかっても、1つ1つの文構造を完璧に把握するよう心がけましょう。
英文法の勉強は、入試やTOEICで大きなウェイトを占める長文読解にも必ず生きます。まずは基礎からしっかり取り組んでいきましょう。
英文法を覚える際のポイント
英文法を勉強する際に、抑えていただきたいポイントを紹介します。
5文型をもう1度確認しよう
5文型とは、この5種類のこと。英語の語順のパターンを、5つに分類したものです。
第1文型 | SV | SがVする |
---|---|---|
第2文型 | SVC | SがCである |
第3文型 | SVO | SがOをVする |
第4文型 | SVOO | SがOにOをVする |
第5文型 | SVOC | SがOをCにVする |
繰り返しになりますが、英語では語順がとても大切です。このパターンを抑えることで、英文法の勉強はぐっと楽になります。もし知識があやふやであれば、復習しましょう。
また、日本での英語の勉強は、学校、塾、市販の教材、どれもこの5文型の知識を元に書かれていることがほとんどです。ここを抑えなければ、英語学習がなかなか進みません。
また「文型」の大切さもさることながら、「Sとは何か?」「文中のこの単語はSVOCのうちどれに当てはまるか?」という文型の基礎知識が最も重要です。この機会に復習しましょう!
英文法は演習中心の学習で覚えられる、参考書は補助的に使おう
「よーし、参考書を読み込んで、マーカーも引いた!この文法分野はバッチリ!」
と思って問題を解いたら、全く歯が立たなかった経験はありませんか?私はたくさんあります。
ここでは、「問題集を解くことを勉強の中心にし、参考書を補助的に使う」のがおすすめな理由を解説します。
参考書は情報量が多すぎて頭に入りにくい
参考書は情報量が膨大すぎます。これを一冊読むだけで丸ごと頭に入れるのは、至難の技です。
問題を解きながら、「なんだっけ?」「こうかな?」と解答を考える、アウトプットの勉強法が必要です。
参考書にマーカーを引いたり、付箋をつけて、「よし!よく勉強した!」と思ってしまうことがよくあります。
しかし、その知識本当に頭に入っていますか?それを確認する必要があります。確認するには問題を解くのが一番です。
問題を解いてアウトプット中心の学習を意識する
問題を解くということは、頭の中に入れた知識を引っ張り出すアウトプットの作業必ずをすることになります。
インプットしても、アウトプットできなければ「覚えていない、分かっていない」と判断されてしまいます。
本当に覚えたのか?そして、問題として問われたときに答えられるのか?を確かめながら勉強をすすめることが大切です。
問題集は一冊を徹底的にやり込もう
また重要なのは、選んだ一冊を徹底的にやり込むこと。間違えた問題には印をつけておいて、何度も解き直しましょう。
次の問題集に進むのは、一冊を完答できるようになってからです。中途半端にあれこれ手を出すのは時間の無駄になってしまうので注意しましょう。
英文法の覚え方4選
英文法の必要性、学習のポイントをお伝えしたところで、次に覚え方をご紹介します。
先述の通り、英文法を覚えるには、問題集などを解き、演習中心に行うと効果的です。問題集は、問題を解いて終わりではなく、その問題集を余すことなく使いこなしましょう。
1. 音読する
学習する文法項目が含まれた例文を大きな声を出して読みましょう。このとき、例文のイメージを頭の中で膨らませながら読むのがおすすめです。
初めは、文法についての解説は読まなくてOKです。とりあえず例文を声に出して読みましょう。読んでみて、意味がわからなければ解説を参照してください。理解できるのであれば、確認しなくても大丈夫です。
発声しながら読むことで、日本人がよくやってしまう「後ろから戻って訳す」ことを防げます。音読しながらイメージを膨らますには、英文を頭から順番に理解していくことが必要です。
英文の意味がわからない場合は?
音読のポイントは、意味がわからない場合でも、後ろから戻って意味を分析しないこと。
一度音読して意味が頭に入ってこない場合は繰り返し音読しましょう。
さらに例文に対応した音源がある場合は、聞きながらシャドーイング(一瞬間をおいて、音声を追いかけて読む)、オーバーラッピング(音声の上に重ねて読む)するトレーニングもおすすめです。
リスニング対策になるだけでなく、音としても覚えた方が記憶に残りやすいです。また、英語の読み方も分かり、次に説明するスラッシュリーディングのヒントにもなります。
2. スラッシュリーディング
英語を英語のまま理解するために、重要なトレーニングです。英文を頭から理解していくことに役立つため、英文法の理解にも直結します。
英語の文章を読み進めるとき、いちいち後ろから戻って訳していませんか?
この方法では、時間がかかるだけでなく、いつまでも脳内で英語を日本語に翻訳してしまいます。これでは、速く英語を読むことができません。
「後ろから戻って訳す」くせを治すトレーニングとして、スラッシュリーディングがおすすめです。スラッシュリーディングとは、意味のかたまりごとにスラッシュ(/)を入れながら英文を読んでいく方法です。
例えばこんな英文があります。“She works for a company that makes furniture.”
この英文にスラッシュを入れると、以下になりますね。
“She works / for a company / that makes furniture.”
日本語に訳すと「彼女は働いている / 会社で / 家具をつくる」ですね。
このようなスラッシュリーディングに慣れると、英文を頭から読んだだけで理解できるようになります。
脳が英語の読み方に慣れていくんですね。
英文のかたまりを捉えられるようになり、読む時も、聞くときも、読んだまま、聞いたまま理解出来る様になります。
だんだんとスラッシュを書き込まなくても、頭から英文を理解できるようになっていきますよ!
3. 並べ替え
もちろん、問題集の並べ替え問題を解くのが簡単ですが、ここでは、問題集を使わない方法も紹介します。
例文)Tom bought the car from his friend.
順番をめちゃくちゃにして書きます。
friend from Tom the car his bought
今回の例文の場合は「トムは、彼の友達から車を買いました」
という和訳を見て、最初の文に戻しましょう。
簡単なトレーニングですが、英語の語順を掴むのにもってこいの方法です。
このトレーニングを積むと、間違った語順の英文を見たときに、瞬時に気づけるようになります。
4. 英作文
アウトプット・トレーニングも、英文法を自分のものにするために必要です。今までトレーニングしてきた文法項目を使って自分で自由に作文してみましょう。
例文の単語を、自分の身の周りのことに当てはめて変えてみるのもおすすめです。
英作文をしたあとは、覚えて声を出して読むこともいいです。
また、やり方が掴めてきたら、英作文を口で言うだけにするのもおすすめの方法です。毎日2〜3行でも、積み重ねると、すらすらと口から英文がでるようになります。
添削システムやオンライン英会話で、英作文が間違っていないかチェックしてもらうのもおすすめです。
英文法を覚えられない人の特徴
次に、英文法を覚えられない人の特徴について解説します。ここで挙げる特徴は、すべて英語の基礎に関することです。
この特徴に当てはまった場合は要注意です。
せっかく勉強しても、なかなか英文法を覚えられない可能性があります。その場合は、1度基礎を復習することをおすすめします。
語順を理解していない
すでに述べたように、英語では語順が文の意味をなすための重要ポイントになります。
I had my hair cut.
この文が「私は切った髪を持っていた」または、「私は髪を(自分で)切った」という意味だと思った人は要注意です。
この文では、haveを第5文型の使役の用法で使っています。
つまり、have + O + C「OをCにする(してもらう)」という形です。
「O=私の髪」を「C=切られた状態」にしてもらった、ということですね。
よって、英文の正しい意味は、「私は(誰かに)髪を切ってもらった」です。
すんなりと理解できない場合は、5文型を復習しましょう。
まとまりが掴めない
Ken has a dog.
といった短い文であれば、「ケンは犬を飼っている」とすぐに理解できます。
しかし、
A dachshund is a dog from Germany with a very long body and short legs.
こうした長い文は、
A dachshund is a dog / from Germany / with a very long body and short legs.
(ダックスフンドは犬です / ドイツからの / とても長い胴体と短い足を持った)
このように、「どこからどこまでがまとまりなのか」を掴めないと英文を理解できません。
参考書に載っている例文も、かたまりごとに意味を掴んで理解しないと、読みにくく、覚えにくいです。かたまりを捉える練習は、スラッシュリーディングがおすすめです。
単語の品詞が分かっていない
突然ですが、問題です。
()に当てはまる選択肢は、1〜4のうちどれでしょうか?
Kate is a ()
- swimming
- negative
- teacher
- sadly
()の前にはaがありますから、品詞を分かっている人であれば、()に入るのは名詞ということが分かりますよね。
答えは、3.Teacher です。
このように、単語の品詞は、英文法に大きく関わっているので、品詞の勉強も文法とセットで行いましょう。
また、接辞語は大きなヒントになりますので、こちらも勉強しておくと良いでしょう。
まとめ
- 英文法の勉強は必要
- 英文法を勉強する際のポイント
- 英文法を覚える方法
- 英文法を勉強する際の注意点
- 英文法のおすすめ教材
について解説しました。
参考書を読んで満足するのではなく、問題集で知識が身についたかどうかを確認しながら勉強を進めてくださいね。
さらに音読、スラッシュリーディング、並び替え、英作文などで英文法に慣れ親しむことをおすすめします。
英文法を理解したあと、その例文に慣れるようにすると、英文を読むスピードが上がり、入試やTOEICの点数アップにつながります。ぜひ試してみてください。